木曜倶楽部

しがない一オタクの雑文。腐っております。

李徴の女

文スト文アルと文豪関連のサブカル系ジャンルに次々と沼ってきたが、まさかかようなことになってしまうとは。

李徴を拗らせてしまった。

李徴というのは、中島敦作『山月記』の主人公だ。文ストでは芥川を拗らせていたはずで、文アルでは久米やら無頼派やらを拗らせていたはず…だったのだが…

それらにいた中島敦はかわいかったしかっこよかったものの文ストでは腐れた目でしか見ていなかったし、文アルに至っては誠に失礼ながらあまり眼中になかった。ただ今は裏敦にやられて強火で推している。

ただ少し前までラブライハー(ラブライバーではない)の私は全身全霊をかけて坂口安吾の追っかけをしていた。…ひどい話だ。

言い訳をすれば全集は一度図書館から借りてはみた。全く読めなかったが。タイミングが寝る直前だった上泉鏡花を読んだあと、そしてちくま文庫である。どうしてちくま文庫の本はあんなに小さいんだ。乱視近視のバリューセット哺乳類にちくま文庫の本を一冊一気に読みきれというのはかなり無茶である。目がすごく滑る。山月記までもたどり着けなかった。かめれおん日記で挫折してそのまま返した。

そういうことがあったので、私が山月記をしっかり読んだのは今年の春である。現国のクソババ…失礼、あまりニューロンの働きが活発であらせられない教師の話を聞く代わりに5周以上した。ちなみに芥川龍之介の枯野抄、太宰治の葉桜と魔笛夏目漱石のこころも5周した。

山月記はとんでもなく面白かった。淡々とした文体のわりに情景描写が盛り込まれていて、言い回しもハイセンス。袁傪と李徴の関わりも、一等仲の良かった友人という以外に書かれていないゆえ想像の余地をふんだんに残している。李徴の一人語りでも口調から人柄が表れていた。とくに終盤は彼の自嘲癖が涙を誘うし、なんなら彼の漢詩も涙腺にくる…これはたぶん個人的に好きな曲「タイガーランペイジ」(山月記を元にした歌である)にがっつり歌われていたからであろうが。

https://sp.nicovideo.jp/watch/sm11641089

鏡音リンの声に忌避感がなければ聴いてみていただきたい。できればコメント非表示で…PVの虎っぽい子がかわいいのだ。


ところで、読者の皆様方は本を読む時映像が浮かぶタイプだろうか?

私は映像が浮かぶタイプだ。しかも難儀なことに、ゲームやら漫画やらのキャラクターを役に当てはめるというめんどくさいことをやる。人間失格の大庭葉蔵はなぜかわからないが鶴丸で再生されたし、こころの先生は毛利元就公で再生される。劇を見ているつもりになるのだ。ちょっとどうしようもない癖なのだが、結構楽しい。

どうして隙を見つけてここで自分語りしたかといえば、私が李徴強火担になったことの遠因がこの妄想癖にあるからである。とりあえず誰が誰の役をやっていたのかだけ先に書いてしまおう。言い訳は後でする。

とりあえず私は鍾士季に処分されるか、郭淮に撃たれるかすると思う。李徴の一人語りの口調と、最初にあった李徴の人となりの説明で、「あ、こいつ士季じゃん…」となった。

ちなみに私の三國無双での最推しは鍾会だ。empiresはまだやっていないのだが、やり始めたら恋愛イベを一番最初に埋める自信がある。エディ子とぐらいでしかそういうのを拝めない、のだ。史実で嫁さんがいないらしい。お前、時代的にちょっとやばいのでは…?(まぁエディ子の気分次第ではある。私と夢主は人格も外見も違うからね…感情移入はガンガンするが…)

ちなみに参考までに私の鍾士季への狂いっぷりをご覧いただくとしよう。

推しキャラは長文で語るものだと思っている。


…長々と第2の原因について話してしまった。第1の原因は李徴自身の魅力である。先ほどまでの冗長な士季の話はあくまで私の想像内の、李徴のガワの子がとにかくやばい、というものなのだ。正直なところ、あわよくば三國無双の沼の民が増えやしないかと邪な考えでこれを話したというのもないわけではないが。

臆病な自尊心と尊大な羞恥心により矩を越えた。なぜかはわからないが、どうにもそういった、スレた人間に心惹かれる。

偶狂疾に因りて殊類と成る。ヒトからケモノになる、古今東西そういう物語はあるが、私は李徴より悲しく美しいケモノを知らない。ヒトを徐々に忘れてゆくことを恐れ、ヒトの文化をケモノになれども愛し続けた。…まあ、妻子のことを先に頼まないあたりが自信過剰で厭世家の李徴らしいというか、なんというか。

李徴は最後に一吠えして消えてゆく。

消えてゆく詩人の姿が、ずっと頭の中にある。

叶わぬ願いだが、いつか李徴の詩を読んでみたいと、私は山月記を読了してより思っている。私には漢詩の良し悪しはわからない、から、多分馬鹿正直に褒めてしまうだろうが。もし三途の川の向こうに李徴殿がいたら怒られるだろう。技術とかなんにも知らないもの。…ただ、何も知らない奴の心をこうまで狂わせられるのだから、彼は臆病な自尊心と尊大な羞恥心に折り合いをつけられていたなら、国を代表する詩人になっていたのかもしれない。李白とかのようにこちらの教科書に載っていたのかもしれない。どこかの並行世界でそんな話転がってないだろうか?


もし今あなたがお暇ならば、山月記をもう一度読んでみてほしい。

少しだけ李徴がかっこよくみえる可能性があるから。