木曜倶楽部

しがない一オタクの雑文。腐っております。

何も知らずに夢を見る

デレステの総選挙で結果発表があったそうだ。

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りあむさんという子は、中間と同じくらいで3位であった。りあむさんはデレステをあまり知らない私でも知っている。たくさん話題になっていたから。そして今も、キャラクターとしての思惑どおりに燃えている。りあむが好きな人はネタにしたり考察をしたりしてはしゃいでいるし、嫌いな人も嫌いな人で楽しそうに燃やしている。

ゆえに私も夢見りあむの波に乗ろうと思うのだ。

私は夢見りあむをほぼ知らない。ネットで話題になった分だけだ。ただしその情報を見る限り、夢見りあむはかわいいやつだった。彼女の言葉でいうなら、「ちょろいオタク」の一人だった。

私が彼女を好んだのは、バカではない、不器用な人間であったからだ。周りの環境に恵まれすぎて自分を否定せざるを得ず、なまじ恵まれているがゆえに人と関わることが不得手。何というか、近しいものを感じた。


ただ、今回の結果発表。私は彼女のセリフに疑問を覚えた。あの誤解を招きそうな言い回しではない。

彼女の中にある「アイドル」が、恐ろしく感じたからだ。

彼女にとってアイドルとは、尊いものであるらしい。努力、ファンの声援を下地に、金色の階段を一歩一歩踏みしめて歩いていくようなモノをアイドルと言うらしい。努力をせず、炎上を利用してモーターを回して上り詰めた彼女自身はアイドルでないと。


アイドルとは、そんなに大層なモノなのか?


アイドルとは職業である。そして、職業ということは、極論を言えば「替えがきく」のだ。P達の担当それぞれには替えがないかもしれないが、それでもアイドルマスターがもし終わったとすれば、かかる個人差はあれど違うモノにはまり、違うキャラクターを担当していくだろう。島村卯月もナターリアも、夢見りあむもいつかは消費されて時代の海に沈んでゆく。我ら消費者の手によって忘れられ片隅に置き去りにされる。彼女たちというデータ、彼女たちの想いは、私たちの欲望によって泡沫の夢を掴むために走ることを要求され、一睡の夢の内に消えてゆく。

彼女たちもそれを望むのだろう。ガラスの靴を履いて、王座について。「みなさん、ありがとう!」と笑顔で手を振りたいのだろう。ガラスの靴も王座も、彼女たちやそのファンたちにとっては煌めく星であるのだろう。

しかし、そこへ至る道は彼女たちが夢見るようなシンデレラ城の美しい階段ではない。ファンの欲望や駆け引き、情報操作、ネタさえも武器になる。そういう血塗られた戦場で、スターの椅子を取り合うバトルロワイヤルなのだ。見る目を変えればガラスの靴だって鉄の香りがする、王座には黒幕の糸が引かれている。裏方の欲望と思惑で彩られた階段を、彼女たちは登る。

少なくとも、全てに現実を重ね、幻想に想いを馳せきれない人間には、この総選挙も、リアルの総選挙も、戦争にしか見えないのだ。

そしてこの選挙は事実戦場であったではないか!ナターリアPはスネークで話題を取り武器にした、工藤忍Pはコナンを引き入れ戦った。そしてりあむ、いやりあむPは類稀なるキャラクターを駆使して大勢の消費者を取り込み上り詰めた。

勝てば官軍、それだけの話だ。


ただ哀れなことに彼女自身は純粋であったのだ。彼女はアイドルに夢を見ていたのだろう。友情努力勝利のジャンプ漫画のようなものを信じていたのだろう。シンデレラ城の階段を登り、ガラスの靴を履いて笑いたかったのだろう。しかし彼女が使わされたのは階段の裏にあるエレベーターだったのだ。誰よりもアイドルに夢見た、純粋で真面目な少女には厳しい仕打ちとしか言えない。

その上彼女には、「ポッと出の3位」というプレッシャーがのしかかるのだ。総選挙がピークだった、と言われないために、幻滅されないために、彼女はアイドルをしなければならない。黒幕の糸がまかれた椅子と、血塗られた靴にすがらなくてはいけない。


アイドルというのは、かくも恐ろしいのだ。